1.マネジメントとは?

組織をして成果をあげさせるための道具、機能、機関がマネジメントである
エッセンシャル版P300

成果をあげるとは?

ドラッガー理論では、企業を含めた全ての組織を社会的機関として捉えます。ドラッカーは、組織は社会における特定のニーズを満たすために存在するものであり、その目的は自分たちの利益を追求することではなく、社会・地域・個人のニーズを満たすことだといいます。そう考えると、「成果をあげる」とは、ある特定のニーズを満たすということであり、成果をあげることを実現するには、その組織が満たそうとしているニーズは何なのかをはっきりさせることから始めなければなりません。それは、自分たちはどんな使命に従って行動するのかを明確にするということです。一つの組織が、社会に存在する多様なニーズに対応するのは不可能ですね。だから、自分たちの組織はどのニーズを満たすのかを考える、すなわち組織の使命を明確にする必要があるのです。

顧客を創造するとは?

ドラッカーは、企業(組織)の目的は顧客を創造することだとも表現しています。これは決して、自社の顧客を増やそうという意味ではありません。先にお伝えしたように、組織は社会・地域・個人のニーズを満たすために存在すると考えれば、組織にとっての顧客とはニーズそのものです。だから顧客をつくるとは、ニーズを見つける、もしくは新たなニーズを生み出すということになり、顧客の創造とは、すでにあるニーズを満足させる商品やサービス、あるいはニーズそのものを生み出すような商品やサービスを提供し、それを望む人々を満足させ続けることだと考えることが出来ます。
しかし「病院も顧客の創造が必要だ」といわれたら違和感を持たれる看護師のみなさんが多いのではないでしょうか?それは、顧客と聞くと、収益事業におけるお客様を連想し、顧客を創造する=過度な医療を提供するとか、無理に患者をつくり出すというようなイメージを持つからかもしれません。患者とは病院に治療を求める人で、病院とは診療報酬によって利益を得る組織だという捉え方だとそうなってしまうかもしれません。しかし社会は大きく変化しています。現在は、病院に求める社会のニーズは治療だけとは限らないのではないでしょうか。ここで一度、これまでの固定観念を捨て、社会・地域・個人が病院という組織に求めているものは何だろう?と根本的に問い直すことで自分たちの仕事を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

利益の意味を正しく捉える

企業とは営利目的の組織です。しかしドラッガーは、企業は利益を追求するために存在するのではなく、利益は使命を達成した結果だといいます。けれどもドラッガーは利益を求めることを否定しているわけではありません。むしろ多くの利益を得ることを評価しています。利益は経営資源であり、資源がなければ顧客を創造することも出来ず、組織を維持することも出来なくなります。社会的機関である組織を失うことは社会的損失につながるため、企業を含めた全ての組織が利益を得るということは社会に対する責任を果たすことだと捉えるからです。
病院は従来、非営組織という認識がありました。しかし、非営利といえども経費を生み出す利潤(一般にこれも利益と呼んでいる。正式には粗利益)を最低限得なければ人材育成も医療機器への投資も出来ず、質の高い医療は提供できません。そもそも非営利組織というのは企業のように株主がおらず株主に対して収入からすべての経費を差し引いた利益(一般にこれも利益と呼んでいる。正式には営業利益)の一部を配当する必要がない組織という意味ですね。「そんなことはわかっている」と言いながらも、顧客を創造して利益をあげることが社会的な責任だと理解はしていても、病院が利益を追求することは倫理的に問題だという潜在意識を持つ看護師さんが多いのではないでしょうか。しかも、そんな意識を持つ看護師さんのほうが、看護師としては優秀なのかもしれません。
繰り返しになりますが、企業も病院も、全ての組織は利益を得るために存在するのではなく、顧客を創造するために存在します。しかしその先に利益を求めなければ顧客の満足を継続することさえ出来なくなります。だから「組織が成果をあげるために必要不可欠な資源が利益である」というように、目的ではなく手段として利益を捉え、使命を追求しながら、その結果として利益を出すことを考えられるような、倫理観とともに正しい経営感覚を持った看護師さんを育てることが大切ではないでしょうか。

マネージャーとは?

マネージャーとは組織の成果に責任を持つ者であり、2つの役割があるとドラッガーはいいます。1つ目の役割は、投入した資源よりも大きな価値を生み出す生産体を創造することであり、2つ目は、あらゆる決定と行動に優先順位をつけることだと述べています。その2つの役割を果たすことで成果をあげることがマネージャーの仕事であると考えれば、マネージャーの仕事をする=成果をあげるためにすべきことは、そもそも自分の組織の使命は何かを明確にすること、そのためには顧客を創造することから始める必要があるということがわかります。
また、近年「医療はサービス業だ」といわれますが、先にお話しした「顧客」と同様、医療や看護に対して「サービス」という言葉を使うと看護師のみなさんは違和感を持たれるのではないでしょうか。一般に、無料で何かを提供することも「サービス」と表現するため、この言葉に軽い印象を持つ人もいます。また、接遇=サービスでもありません。サービスとは無形の財ともいわれ、形がないのに相手に価値=満足を与え、価値の代償として大切なお金をいただくというように、サービスとは崇高な行為だといえるのです。したがって、命を預かり、無形の価値を相手に提供する看護師さんの仕事は、知的で崇高なサービス業だととらえ、病院の中で看護の役割に応じた成果に責任を持つことが看護マネージャーには必要でしょう。

これまで大枠でマネージャーの役割をお話してきました。みなさんは「顧客」「利益」「サービス」などは一般企業が利用する言葉であり、医療や看護にふさわしくない表現だという気持ちをお持ちだったかもしれません。しかし企業も病院も、社会のニーズを満たす組織という意味では何ら代わりがありません。そんな気持ちを持って違和感を和らげていただき、ドラッガーの理論に沿ってマネジメントを具体的に考えていくことにしましょう。

 

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