ナラティブの可能性

数年前から心理学に興味を持ちはじめ、河合隼雄氏の本を何冊も読みましたが、その中に「人間は自分の中にある物語性に気付いていく過程の中で、一緒に心の傷も癒されていく」と書かれていました。その時はあまりピンと来なかったのか、物語性というワード自体忘れていたのですが、今年に入ってテキックスに出会い、病院看護部での「ナラティブ(=物語)の活用」に携わらせていただくうちに、突然昔読んだ本の内容を思い出したのです。

看護師さんの取材をしながら、病棟看護師時代に未消化のまま流していた出来事と重ねて意味の再構築(捉えなおし)をし、原稿にまとめていく作業をしていると、まるでセラピーを受けているかのような感覚に陥ります。ナースステーションや病棟内で活き活きと働いている看護師さんをカメラのレンズ越しに見ることは、私にとって回想法のような効果をもたらすことなのかもしれません。また過去を回想するだけではなく、手術室など自分が配属されたことのない部署で活躍される看護師さんのお話を聞くと、疑似体験をしているような感覚になります。

インタビュイーの方にたくさんお話しいただけるよう、インタビュアーの私は確かに聞き手に回っているのですが、話を聞いている側の自分が癒され、心が軽くなっていくというのはとても不思議です。

私は今、テキックスが運営する、ななーる訪問看護ステーションで訪問看護師としても働いていますが、今後は在宅で療養する方々や、在宅医療の現場で活躍する医療・介護従事者のために、ナラティブの活用方法を考え、実践していけたらと思っています。医療の現場ではどうしても「科学的根拠」に偏った対応をしてしまうことで、「意味」を問う患者さんの気持ちに十分に寄り添えない場面が多く見受けられます。医療を提供する側にいる人と、医療を受ける側にいる人がナラティブを共同して紡ぎ出していくことで、その人らしい生き方や最期の迎え方につなげて行きたいです。

 

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