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ドラッガー理論を看護マネジメントに活かす方法

 

マネジメントの発明者といわれるドラッカー(Peter Ferdinand Drucker,)。
看護師さんがマネジメントを学ぶとき、ドラッガーの著書を手にされる方も多いようです。
しかし「理論は納得できるけれど、臨床現場でうまく活用できない」とか「企業と病院は違うので、どこか内容に違和感がある」という声を耳にします。
そこで今回は、ドラッガー理論を医療現場の視点を交えてやさしくひも解き、看護マネジメントに活かす方法を考えてみたいと思います。

管理という言葉のプレッシャー

「看護管理学」という学問があるように、看護の業界ではマネジメントに対して「管理」という言葉が一般的に使われているようです。
しかしこの「管理」という言葉がマネージャーのみなさんを苦しめているのではではないでしょうか。
そもそもマネジメントとは経営あるいは管理と訳せますが、これを管理と訳すことで、マネージャーは管理する人、
すなわち全てを把握してコントロールする人というイメージをしてしまいがちです。
そんなイメージを持ってマネジメントをすることによって、自分を苦しめるばかりではなく、組織の広がりがなくなっていきます。
マネージャーとは組織を経営する人です。では、組織を経営するとはどういうことでしょう?
それをドラッガーの理論をなぞりながら考えていくことにしましょう。

マネジメントとは?

 

組織をして成果をあげさせるための道具、機能、機関がマネジメントである
エッセンシャル版P300

成果をあげるとは?

ドラッガー理論では、企業を含めた全ての組織を社会的機関として捉えます。
ドラッカーは、組織は社会における特定のニーズを満たすために存在するものであり、その目的は自分たちの利益を追求することではなく、社会・地域・個人のニーズを満たすことだといいます。
そう考えると、「成果をあげる」とは、ある特定のニーズを満たすということであり、成果をあげることを実現するには、その組織が満たそうとしているニーズは何なのかをはっきりさせることから始めなければなりません。
それは、自分たちはどんな使命に従って行動するのかを明確にするということです。一つの組織が、社会に存在する多様なニーズに対応するのは不可能ですね。だから、自分たちの組織はどのニーズを満たすのかを考える、すなわち組織の使命を明確にする必要があるのです。

顧客を創造するとは?

ドラッカーは、企業(組織)の目的は顧客を創造することだとも表現しています。 これは決して、自社の顧客を増やそうという意味ではありません。
先にお伝えしたように、組織は社会・地域・個人のニーズを満たすために存在すると考えれば、組織にとっての顧客とはニーズそのものです。
だから顧客をつくるとは、ニーズを見つける、もしくは新たなニーズを生み出すということになり、顧客の創造とは、すでにあるニーズを満足させる商品やサービス、あるいはニーズそのものを生み出すような商品やサービスを提供し、それを望む人々を満足させ続けることだと考えることが出来ます。

しかし「病院も顧客の創造が必要だ」といわれたら違和感を持たれる看護師のみなさんが多いのではないでしょうか?
それは、顧客と聞くと、収益事業におけるお客様を連想し、顧客を創造する=過度な医療を提供するとか、無理に患者をつくり出すというようなイメージを持つからかもしれません。
患者とは病院に治療を求める人で、病院とは診療報酬によって利益を得る組織だという捉え方だとそうなってしまうかもしれません。

しかし社会は大きく変化しています。現在は、病院に求める社会のニーズは治療だけとは限らないのではないでしょうか。ここで一度、これまでの固定観念を捨て、社会・地域・個人が病院という組織に求めているものは何だろう?と根本的に問い直すことで自分たちの仕事を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

利益の意味を正しく捉える

企業とは営利目的の組織です。しかしドラッガーは、企業は利益を追求するために存在するのではなく、利益は使命を達成した結果だといいます。
けれどもドラッガーは利益を求めることを否定しているわけではありません。むしろ多くの利益を得ることを評価しています。利益は経営資源であり、資源がなければ顧客を創造することも出来ず、組織を維持することも出来なくなります。
社会的機関である組織を失うことは社会的損失につながるため、企業を含めた全ての組織が利益を得るということは社会に対する責任を果たすことだと捉えるからです。

病院は従来、非営組織という認識がありました。しかし、非営利といえども経費を生み出す利潤(一般にこれも利益と呼んでいる。正式には粗利益)を最低限得なければ人材育成も医療機器への投資も出来ず、質の高い医療は提供できません。
そもそも非営利組織というのは企業のように株主がおらず株主に対して収入からすべての経費を差し引いた利益(一般にこれも利益と呼んでいる。正式には営業利益)の一部を配当する必要がない組織という意味ですね。

「そんなことはわかっている」と言いながらも、顧客を創造して利益をあげることが社会的な責任だと理解はしていても、病院が利益を追求することは倫理的に問題だという潜在意識を持つ看護師さんが多いのではないでしょうか。しかも、そんな意識を持つ看護師さんのほうが、看護師としては優秀なのかもしれません。

繰り返しになりますが、企業も病院も、全ての組織は利益を得るために存在するのではなく、顧客を創造するために存在します。
しかしその先に利益を求めなければ顧客の満足を継続することさえ出来なくなります。だから「組織が成果をあげるために必要不可欠な資源が利益である」というように、目的ではなく手段として利益を捉え、使命を追求しながら、その結果として利益を出すことを考えられるような、倫理観とともに正しい経営感覚を持った看護師さんを育てることが大切ではないでしょうか。

マネージャーとは?

マネージャーとは組織の成果に責任を持つ者であり、2つの役割があるとドラッガーはいいます。
1つ目の役割は、投入した資源よりも大きな価値を生み出す生産体を創造することであり、2つ目は、あらゆる決定と行動に優先順位をつけることだと述べています。
その2つの役割を果たすことで成果をあげることがマネージャーの仕事であると考えれば、マネージャーの仕事をする=成果をあげるためにすべきことは、そもそも自分の組織の使命は何かを明確にすること、そのためには顧客を創造することから始める必要があるということがわかります。

また、近年「医療はサービス業だ」といわれますが、先にお話しした「顧客」と同様、医療や看護に対して「サービス」という言葉を使うと看護師のみなさんは違和感を持たれるのではないでしょうか。
一般に、無料で何かを提供することも「サービス」と表現するため、この言葉に軽い印象を持つ人もいます。また、接遇=サービスでもありません。サービスとは無形の財ともいわれ、形がないのに相手に価値=満足を与え、価値の代償として大切なお金をいただくというように、サービスとは崇高な行為だといえるのです。
したがって、命を預かり、無形の価値を相手に提供する看護師さんの仕事は、知的で崇高なサービス業だととらえ、病院の中で看護の役割に応じた成果に責任を持つことが看護マネージャーには必要でしょう。

これまで大枠でマネージャーの役割をお話してきました。みなさんは「顧客」「利益」「サービス」などは一般企業が利用する言葉であり、医療や看護にふさわしくない表現だという気持ちをお持ちだったかもしれません。
しかし企業も病院も、社会のニーズを満たす組織という意味では何ら代わりがありません。そんな気持ちを持って違和感を和らげていただき、ドラッガーの理論に沿ってマネジメントを具体的に考えていくことにしましょう。

マーケティングとイノベーション

 

医療業界は競争のない時代を終え、病院間でのサービス競争が生じる時代になりました。大阪のある病院では、大手居酒屋チェーンが患者サービスの向上を支援して病院の経営参画を果たしています。このように変化する社会の中で重要なことは、安全を根底において倫理観を持ち、使命に従った病院改革を行うことではないでしょうか。では何をどのように改革すべきなのかを考えてみることにしましょう。

真のマーケティングは顧客からスタートする
エッセンシャル版p.17

顧客を創造する機能

先にお話した「顧客を創造する」ということを実現するために必要な機能は2つあります。
1つめは短期的な視点で考える「マーケティング」。そしてもうひとつは中長期的な視点をもった「イノベーション」です。マーケティングとは、「顧客がどんな医療や看護を提供してほしいと願っているのか?」を考えることからスタートし、顧客の現状や価値観を理解したうえで、顧客自身もまだ気づいていない潜在的ニーズを見極めます。

そしてそのニーズにピッタリのサービスを提供する活動です。次にイノベーションは革新という意味ですが、このイノベーションとはこれまで社会になかった市場を生み出し、新たな物的・人的・社会的資源という価値を提供するという意味での革新です。マーケティング機能を使って新たなサービスをつくり続けたとしても、このイノベーションの機能がなければいつか組織は衰退するといわれます。だからこれら2つの機能を使って顧客を創造することが、マネージャーの仕事の出発点になるのです。

自院の事業を問う

これまで医療業界には馴染みがなかったマーケティングも、最近ではその必要性が取り沙汰されているようです。しかし誤解してはいけないのは、利益を求め、病院を売り込むことに傾注するのがマーケティングではないということです。

ドラッガーは「われわれは何を売りたいか」ではなく「顧客は何を買いたいか」を問う事の必要性を説いています。すなわち「人々は自院に、自分たちの病棟に何を求めているのだろうか?」を問うことからスタートし、「自分たちはどんな医療・看護を提供するべきか?」を検討していきます。

しかしその前に必要なことは、医療者側の、病院という組織への認識を改めることだと思います。「病院とは病気を治療するところ」という認識と「病院とは健康な人を増やすところ」という認識では、事業の広がりは変わってきます。「病院は生きることを支えると場所」という認識ならば、また事業展開は変わってきます。

近年疾病予防が取り沙汰されているように、病院の顧客は病気を持った人だけではなく、すべての国民であるならば、治療以外に提供したいサービスがどんどん出てくるはずですね。
サービスと聞くと、つい接遇面をイメージするかもしれませんが決してそういう狭義の意味だけではありません。ここでいうサービスとは、人々の健康や生きることを護る無形の価値を提供する行為です。「社会の人々は健康や生きることにどんな支援を求めているのだろう?」ということから出発し、自院の特徴を踏まえると、その中のどのニーズになら応えられるかを考えていただきたいと思います。

マーケティングプロセス

みなさんが中華料理を食べに行くことを検討しているとしましょう。ある中華料理店の店長に「あなたのお店はどんなお店ですか?」と尋ねたときに「うちは中華料理を提供している店ですよ」という返事が返ってきたらどうでしょう?間違ってはいないけれど、物足りないと感じるのではないでしょうか。

世の中の多くの一般人は現在の病院に同じようなジレンマを感じているような気がします。「うちは脳外科の急性期病院(病棟)です」「ここは回復期リハビリ病院(病棟)です」といわれても、ほかの同じ領域の病院(病棟)と何が違うのかわからないので判断基準が持てないのです。医療は一定の基準があるでしょうが、看護は幅があるはずです。
「こんな人のニーズを満たす、こんな看護を提供している病院(病棟)です」と言ってくだされば、患者がそこを選ぶ理由が明確になり、売り込まなくても選ばれるようになります。その「こんな人の」「こんなニーズを満たす」「こんな看護」を検討するのがマーケティングのプロセスです。

顧客を知る

ドラッガーは、マーケティングが目指すものは、顧客を理解して製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることだといいます。マーケティングにおいては、選ばれる病院を目指して既存のサービスを振り返るという発想ではなく、顧客が選びたいと思う病院を創るという意識を持って「選択と集中」を行うことが重要になります。
この選択と集中とは、自社の得意とする事業分野を明確にして、そこに経営資源を集中的に投下する戦略をいいますがこれからの病院は、診療科というような既存の事業分野だけではなく、どんな顧客に焦点を絞ってサービスを創造し、他院と差別化していくかを考えることが必要です。
疾病からの回復、健康の保持・増進、疾病を持ちながら生きるということ、残りの時間を有意義に生きること、そんな数あるニーズの中で、どの部分にスポットを当てて、ほかの病院では受けられないような、自院ならではの医療や看護を提供するのかを考え、実行するのが「他院との差別化」という意味です。

また、病院は接遇の改善が必要だという世間の風潮に乗って、通り一遍の接遇研修を行い「患者さま」と呼び方を変える病院が増えています。しかし本当にすべての人々がそれを望んでいるのでしょうか?「当院は(当病棟は)、家庭的な雰囲気で心の距離を縮めて癒しの看護を提供したいので、敬語は使わず患者さまとは言いません」という病院(病棟)を選びたい層があるかもしれません。
また、近代的な病院が増えている中、そんな場所では落ち着かないという高齢者も多いかもしれません。だから老朽化している病院であれば、いっそターゲットを高齢者に絞り「古き良き時代に戻れる病院」として、病院全体に昭和の味を出していく戦略も考えられます。列車に女性専用車ができたように、そんなニーズがあるならば、女性専用病棟へのニーズがあるかもしれません。これも他院との差別化です。

全ての人に選んでもらおうと考えると選びにくい病院になり、「どんな誰に、どんなサービスを提供して喜んでもらおうか」を考えると選ばれる病院になっていくのです。

非顧客に焦点を当てる

マネージャーのみなさんは、顧客のニーズを探るために病院(病棟)内に意見箱を設置したり、入院患者さんの声を拾ったりされていることだと思います。そのように自院を選んでくれた顧客の更なるニーズを拾うのも大切ですが、さらに自院を選んでいない非顧客に目を向けるというのも大切な視点です。非顧客を顧客に取り込むことが、ドラッガーがいう「顧客を創造する」ということにつながります。

顧客は次の3種類に分かれます。

①ロイヤリティの低い顧客=これは、今は自院を利用してくださっているけれど、もっといい病院があればいつでも他を選ぶという意識の人たちです。
②自院を選ばない顧客=自院にいい印象を持っておらず、利用しないと決めている人たちです。
③病院を利用しない顧客=病院も顧客と認識していない、顧客側も病院を利用する必要性を感じていない人たちです。特に③の人たちを顧客に取り込んでいく、すなわちその人たちのニーズを生み出してサービスを創造していくことは、病院がより多くの人たちに価値を提供し、多くの人たちの健康を護る=成果をあげることが可能になります。

一度、③の非顧客層に、早期受診のメリットや疾病予防のサービスの必要性が実感できる仕掛けを行い、自院に足を運ぶ機会を増やして顧客に取り込む戦略を考えられてはいかがでしょうか?看護師さんが企業に出前講座に行って非顧客と接点を作るなど、方法はいくらでも考えられます。
しかしここで大切なのは「自院の使命は何か?」を忘れずサービスを考えること。収益をあげることを目的に患者を増やすという発想では、顧客は振り向いてくれません。

病院(病棟)を見直しましょう

ドラッガーは、徹底的に顧客の視点でサービスを見ることを薦めています。みなさんも、顧客の立場で今の病院(病棟)の看護サービスをチーム全体で下記の視点で見直してみる、そして改善すべき点を洗い出したら、マネージャーが意思決定をして、優先順位に従って即行動する。それがマーケティングの入口です。
みなさんが置かれている立場によって、検討すべき内容は異なってくると思いますが、病院経営全体を考える前に、まずは病棟でルーチン化されたケア(看護サービス)に対して、下記の視点で検討されてはいかがでしょうか。何度も繰り返しますが、検討前に「自院の使命は何なのか?」ということを病院全体で共通認識しておくことが重要です。

優れたアイデアというものは、常に非現実的であることを知らなければならない
(エッセンシャル版p.271)

一度全てを白紙に戻す

マーケティングという機能を使って既にあるニーズを満足させても、いつかは満足させられない状態になります。そこで必要なのがイノベーションです。
イノベーションとはこれまで社会になかった市場を生み出し、新たな物的・人的・社会的資源という価値を提供するということです。ドラッガーは、イノベーションとは発明のことではなく、人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすことだといいます。富を生むためには資源を生産的に使用する必要があり、看護師さんは富を生み出す重要な人的資源であるため、マネージャーのみなさんは看護師さんの生産性を高める仕組みに対してイノベーションを起こすことも重要になってきます。その話は次のコーナーでお話することにして、まずはイノベーションとはどういうことなのかを考えてみましょう。

組織でイノベーションを検討するときに大切なのは、一度全てを白紙に戻して考えるということです。これは、価値観すべてを疑ってみる、今のサービス全てをゼロにして新しいことを考えてみるということです。新しいことを発想しても「でも病院はこうだから」とか「そうはいっても看護はこうだから」という既存の価値観で発想をストップしてはイノベーションできません。
「病院はこうでないといけないの?」「これまでの看護観にこだわらない」と考え、「どこにもない病院」「誰も思いつかない看護」を提供して、顧客に感動を与えることを目指しましょう。新たなサービスで人々が気づいていなかった潜在ニーズを目覚めさせることがイノベーションです。結果として、顧客の潜在ニーズにこたえていくことを目指します。

イノベーションの機会

ドラッカーは、コップに水が半分入っているということと、コップが半分空であることとは、量的には同じだけれども意味やとるべき行動が違うと説き、人の認識が「半分空である」と変わるきに、イノベーションの機会が生まれると述べます。みなさんも、日常的に今あるものの隙間を見つける癖をつけることが、新たなものを生み出す力を育てるのではないでしょうか。
そしてドラッカーは、このようなイノベーションの機会は下記のように7つあると説き、機会を見つけ出して、それを有効に活用することを薦めています。

予期せぬことを大切に

今は一般的に使われている“付箋”ですが、これは強力な接着剤を作るときに失敗した結果の産物というのは有名な話です。
みなさんおなじみの、人工ペースメーカーも、不整脈の記録装置に間違った抵抗器を入れてしまった結果の産物だそうです。こんなに大きな成果ではなくても、日常では偶然に上手くときがありますね。
それをそのままにしてしまうのではなく拾い上げて、誰もが(教育を受けたら)提供できる新たなサービスに創り上げるということもひとつのイノベーションです。逆に失敗した場合、たまたま失敗したと流してしまうのではなく、その真因を突き止めて新たな手法を生み出すこともイノベーションのひとつです。また、外部の変化として社会の価値観が変化したり新しい発見があったりしたら、それもイノベーションに使えます。

ドラッガーは、特に予期せぬ成功に着目することを薦めています。大きなことをイメージしすぎず、自分たちの足元を見ると小さなイノベーションの機会は沢山転がっているはずです。「偶然うまくいったこと」を出し合い、それを拾って新しいサービスにつなげることをお考えください。しかしその時大切なのは「自分たちの病院(病棟)の使命・事業は何なのか」を中心に据え、顧客の視点で考えることです。

看護は病院の顧客創造の要
サービスの提供者が「顧客はこれを求めている」と思うことが全て正しいとは限りません。これまで病院は画一化されたイメージがあり、広告規制もあったことから、自院のカラーを意識したイメージ戦略を実行されている病院は、数少ないように見受けます。だから提供できる診療科区分や病院機能面で区別するだけで、看護サービスという面から差別化を図ろうという姿勢は、外からはあまり感じられません。

「有名な医師を呼んできたら患者が集まる」という声をよく聞きますが、果たしてそれは正しいでしょうか?「患者を集めるために開業医と連携を密にする」というのは正解ですか?「アメニティを整えると患者は集まる」これは本当でしょうか?もちろん、全て間違ってはいないと思いますが、時代は変化し、人々の価値観やニーズは変化しているのに、医療者側の価値観はそのままになっているということはありませんか?

当社は、看護の質で看護師と患者を集められる病院創りを使命に、病院をご支援しています。「そう簡単に言うけれど無理がある」という意識では病院は変わらずイノベーションは起こせません。「やってみよう!」という看護部長さんとタグを組んで、イノベーションを目指しています。モノがあふれる現代では、商品には機能だけではなく付加価値が欠かせないといわれています。病院に対しても、患者は治療だけを求めているのではなく付加価値を求めています。そこに高品質の看護(その病院らしい看護)という付加価値を提供して患者を感動させ、それをPRして病院の(看護の)イメージを流通させることで、選ばれる病院になっていくはずです。それz病院にとって、顧客の創造のひとつではないでしょうか。

イノベーションの機会は山積み
医療を取り巻く外部環境はめまぐるしく変化しています。少子高齢化、グローバル化が進んで人口構造は変化、それに伴って人々の認識も変化しています。疾病構造も変化し、ストレス社会の影響から精神疾患が急増していると聞きます。そのように考えると、今は医療・看護業界でご活躍のみなさんにとってイノベーションの機会が山積みだといえますね。
無から新たなものを創造するというのはそう簡単なことではありません。世の中の発明も、よく見れば既存のモノとモノとの組み合せが多いもの。みなさんも他業界のサービスに知恵を借りようとされるといいのではないかと思います。
看護サービスとは異なりますが、たとえば最近女性専用列車が増えています。そんなニーズがあるならば女性専用病棟のニーズもあるだろうと考えるなど、ヒントを貰えばいいのです。師長さんが頭を悩ますベッドコントロールも、ほかの病院はどうしているのかと考えるのではなく、誰もやっていない方法を考えようという発想で、ホテルに学ぶのはいかがでしょうか?その一歩がイノベーションにつながるかもしれません。

ヒトの管理とリーダーシップ

 

顧客を創造したら、次にその顧客を満足させるサービスを生み出すための機能が必要になります。サービスを生み出すために必要なものは、ヒト・モノ・カネ・情報だといわれますが、形のない「看護」という価値(顧客を満足させるサービス)を提供する看護師さんの現場では、ヒトが要になりますね。では次に、その大切な「ヒト」を活かすためのマネジメントを考えてみましょう。

人こそ最大の資産
(エッセンシャル版p.81)

戦略思考を持つ

ドラッガーは、個人が持つ知識を使って、成果、すなわち価値を提供する人たちを知識労働者と呼んでいます。人間を対象にする看護師さんの仕事は、決められた手順で誰にでも同じサービスを提供するような仕事ではありません。
仮に手順があるような対応でも、看護の専門的な知識を使って対象者の状態やその場の状況に応じて考えながら臨機応変にサービスを提供されていることだと思います。そんな風に専門的知識を使って働く看護師さんたちを、私は知識労働者だと考えています。付加価値を生むのは病院ではなくそこで働く人たちです。そうすると、その知識労働者を活かす方法を戦略的に考えることが顧客満足につながる最大のポイントとなります。

護師のマネージャーであるみなさんが顧客を満足させるためには、知識労働者が組織の中で高いアウトプットができるように考えることが必要です。そう考えると、マネージャーのみなさんにとっては、スタッフも顧客ということになります。スタッフの持つニーズを見つけるだけではなく、スタッフ自身も気づかない潜在的ニーズを生み出すことが、マネージャーに課された課題のひとつ。そしてどうすればそのニーズを満たせるかを戦略的に考えて意思決定し、行動して成果をあげることが必要です。

生産性の向上

生産性の向上こそマネジメントにとって重要な仕事のひとつだとドラッガーはいいます。そして生産性向上のためには、3つの生産要因をバランス良く保つ必要があると説いています。
3つの生産要因とは、土地や建物などの物的資源、労働資源すなわち人材、資本=明日のための資金をいいますが、特に良質の人材と資金を引き寄せることができなければ企業は永続できないとドラッガーは述べています。特に病院の場合、質の高い看護師という人材は重要な資源になり、優秀な看護師確保と看護師を活性化させるための手段は重要です。
ドラッガーは、3つの生産要因に追加すべき、生産性に影響を与える要因として次の6つを指摘しています。

知識・・・正しく使用したとき、もっとも生産的な資源となる
時間・・・時間はもっとも消えやすい資源。フルに使った時とそうでないときには、生産性に大きな差が生まれる
製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)・・・資源の組み合わせでもある
プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)・・・自分たちで実施するか外部力を活用するか、生産性の高い方を選ぶ
自らの強み・・・いかなるマネジメントも万能ではなく、特有の限界をわきまえることも生産性を左右する
組織構造の適切さ、および活動間のバランス

マネジメントではこれらを有効活用して生産性の向上を図ります。

成果を中心に考える

生産性を考えるときには、成果すなわちアウトプットを中心に考えることをドラッガーは強調しています。技能や知識をいかに提供するか?と考えるのではなく、目標とする成果の達成に向かって、その道具をいかに使うかを考えることが重要です。つまり、組織が成果をあげるために、人材の技能や知識を最大限活かす戦略を立案して実行するのがマネージャーの役割です。
知識を使って労働をする人々を知識労働者とドラッガーは呼び、彼らの特性は、自分の知識が活かせる組織に自由に移動すると指摘します。つまり、知識労働者は自分の能力が発揮できない組織には留まらず、自由に移動するというのです。だから知識労働者を組織化し、個人が持つ能力を結集して高いアウトプットにつなげられるマネジメントがなければ、人財という労働資源自体を喪失するという結果になります。

ドラッガーは、専門知識を必要としながらも、肉体を使って仕事をする時間が長い人を知識技術者(ナレッジ・テクノロジー)と呼んでいます。私は看護師さん全てを知的労働者と捉えていますが、看護師のチームの中で、マネジメントを司る人たちを知識労働者、そして現場で直接看護を提供するスタッフの方々は知識技術者かもしれません。どちらにせよ、マネージャーがマネジメントの知識を活用し、スタッフが看護の知識と技術を活用してチームで高いアウトプットを出すのがチームナーシング。そう考えると、マネージャーとスタッフの役割は違うので、スタッフからマネージャーになった時には視野や視座を変更して仕事をする必要があるでしょう。

生産性を高める組織

ドラッガーは、組織には3つの形があると述べています。

野球型チーム
メンバーはチームに属してプレーしますが、ポジションは固定されています。個人が自己の能力を高め、個別的に評価して、目標と責任をもたせることができるとともに、個人の強みを最大限伸ばすことが可能です。しかし、他のメンバーとの協調性を保ちにくく、柔軟性の弱い組織になります。

サッカー型チーム(オーケストラ型チーム)
メンバーは固定したポジションをもちますが、一体化したチームとして働きます。監督や指揮者が全体を統制してチームで最大限の力の発揮を目指します。高い柔軟性と迅速な対応が可能ですが、そのためには監督が指示する戦術や楽譜が必要となります。

テニスのダブルス型チーム
少人数のチームがこれです。一応のポジションがありますが、柔軟に対応して互いの領域をカバーし合い、強みと弱みを調整し合うことで、メンバーの総計を超えた成果を発揮します。しかしチームが機能するようになるには、時間をかけて訓練を積み、共に働く必要があります。

病院という組織の中で、医師は野球型が好ましいのかもしれません。そしてその医師と上手に協働するために、看護のマネージャーが監督になり、サッカー型の看護師チームが病院(病棟)をまとめていく必要があるのではないでしょうか。また、夜勤帯に限っては、テニスのダブルス型チームを目指すことが重要でしょう。

個人を活かし組織を活性化

チームの中でそれぞれが力を発揮するためには、それぞれが何を目指して行動するのかを示す道標が必要です。その道標に従ってプレーヤーであるスタッフが力を発揮する戦術を考える監督はマネージャー。しかしプレーヤーは毎日試合をしているわけではありません。チームで力を発揮するために、その前提として各自が能力を高めるトレーニングも重要です。そして監督は、プレーヤーが自主的にトレーニングに励める環境づくりにも力を注ぎます。
私たちは看護師さんの職場の中で自主的にトレーニングに励むための環境として、次の3点が重要だと考えています。

①知り合う
②学び合う
③協力し合う

例えばサッカーの試合を行うときに、同じチームのメンバーがどんな特徴や能力をもっているかを知らなければ、どんな時にそのメンバーに頼ればいいか、どこは自分が中心になってプレーをすればいいかがわかりません。監督だけが知っていても、臨機応変に対応しなければいけない試合中に、いちいち監督に聞きに行くなんてありえませんね。

看護の仕事もチームプレー。だから互いがどんな選手なのかを知り、協力し合えなければ勝ち試合は望めません。そして、トレーニングの段階では、互いの持つ知識や技術を他人に示し合い、学び合って互いに能力を向上することが重要です。だからマネージャーのみなさんは、チーム内のコミュニケーションを良好にして互いを知り合い、学び合える仕掛けをお考えください。「広告が規制されている」といいながら、看護師採用のための看護師紹介はフリーです。たとえば看護師紹介のWEBや冊子を作ることで、院内の看護師さんが知り合える機会にもなり、採用ツールにも使えて一石二鳥ですね。

マネージャーを見分ける基準は命令する権限ではない。貢献する責任である
(エッセンシャル版p.125)

プレーヤーの意識を捨てる

専門職の人たちが、専門的知識を駆使して職務経験を重ねた後にマネージャーになった場合、いつまでも専門知識を使ってメンバーと張り合った仕事をしてしまいがちです。しかしマネージャーとプレーヤーに必要な知識や能力は異なるため、プレーヤーとしての自分を一度リセットして職務にあたる意識が必要ではないでしょうか。看護師としての専門知識や技術を用いた職務はメンバーに任せ、メンバーが力を発揮してチームが成果をあげる戦略を考え、行動して組織に貢献することに専念しましょう。

ドラッガーは、マネージャーを組織の成果に責任を持つ者と規定し、人の仕事に責任を持つボスであってはいけないと説いています。マネージャーはスタッフの生産性を高めるための戦略を考えるのが仕事。スタッフの顕在的なニーズと共に潜在的なニーズも捉え、それを満たして満足感を高める戦略を立案しなければなりません。マネージャーにとってはある意味顧客であるスタッフですが、顧客の視点で満足感を与える仕組みを考える上では看護師経験は役に立ちます。しかしそれよりも、スタッフが提供する看護の知識や技術の面については極端な話、ご自身は素人に戻ったくらいの気持ちでマネジメントに取り組んでいただくのがちょうどいいかもしれません。

時間を有効に使う

マネージャーにとっては時間の管理も重要です。マネージャー自身の時間も上手に使わなければ、無駄に時間を浪費しては成果につなげる行動はできません。ドラッガーは、時間マネジメントの3つのステップを示しています。

時間を記録・・・時間の使い方を記録して分析
管理・・・活動を分類する
まとめる・・・無駄を省いてまとまった時間を確保する

まずはご自身の時間の使い方をメモします。一日の時間の使い方を書き出して分析し、これは自分にしかできない仕事なのかを考えます。他の人でも可能な仕事は委譲したり、無駄な仕事を省いたり、時間の浪費を削ったりして自由な時間を確保します。そして優先順位の高い仕事に充てることを考えます。
優先順位の高い仕事を考えるときには、今、最も重要な仕事は何かを考えます。重要な仕事をするために行う行動をリストアップし、優先順位をつけて行動しましょう。その優先順位を考えるときに、ドラッカーは次の4つの基準で考えることを説いています。

過去でなく未来を選ぶ
問題ではなく機会に焦点を合わせる
横並びではなく独自に方向を決める
変革をもたらすものに焦点を合わせる

すなわち、マネージャーは、現状への対応もさることながら、未来に向かって新たな改革に伴う仕事を重要視せよということです。

真摯さが最も大切

ドラッガーは、マネージャーに最も重要な資質は真摯さだといいます。これは学んで身につけられるものではない、マネージャーになる人の絶対条件だと繰り返し説いています。
ここでいう真摯な人とは、成果に対して誠実に向き合い、自分にも他人にも、いつも感情ではなく成果という指標でのみ判断し、行動するというような、まじめで熱心な対応を意味すると考えます。
顧客に対しても真摯な態度で向き合うことは重要です。顧客の満足に注目し、成果に向かって真摯に行動して責任を果たすのがマネージャーです。

少し余談になりますが、7対1の看護基準をとっている病院(病棟)に入院した場合、その他の基準の病院よりも請求額が高くなります。果たしてみなさんはそれを患者にどのように説明されているでしょう?7対1である理由、だから他とは異なるどんな質の看護を提供するのか、それを具体的に説明する責任を果たすこともまた、顧客に対する真摯さではないでしょうか。

リスクを伴う意思決定

マネージャーは戦略を立てる際、全てを一度白紙に戻すという姿勢で思考することが必要です。これまで当たり前に行なってきたことをやめるというのは勇気が要ります。
しかし、新しいサービスを取り入れようとするならば、不要なものを捨てなければどんどん煩雑になるばかり。新しいことを考えるときには、必ず捨てるということも同時に考える必要があります。これまで頑張ってやって来たということで、いつまでも成果の出ないサービスを提供するよりも、早くやめて新たなサービスに転向することが、顧客に対する誠意であり、プロとしての責任です。
「なぜこのサービスをするのか→具体的にどうするのか→いつするのか→何をいつやめるのか→どのようにやめるのか」というプロセスでマネージャーは意思決定していく必要があります。これをドラッガーは「リスクを伴う意思決定」という言葉で説明しています。

そして次にマネージャーは、体系的な組織づくりとして、誰が、いつ、どこで、何を、どうするかを考えて、人財を割り当て実行します。次に実行した結果を検証し、不都合があれば修正しながらP(プラン)D(実行)C(チェック)A(修正)サイクルを回していきます。実行する上で必要なのは、チームの目標を設定し、その目標達成にむけて人材が個人の目標を持って自律して行動すること。目標を使って生産性を高める方法を考えることが必要です。

目標管理

 

知識労働者は、自分自身で独自に使命を持って仕事をするといわれますが、看護師さんはそれが強いように思います。長期に渡って専門教育を受ける中で、看護師という職業の使命を考える機会が多いことから、組織に属してからも、それぞれが自分の看護観で判断して自分の仕事の方向性を見つけられるのではないでしょうか。
しかしそれでは組織の使命にしたがった成果を出すことは困難です。ではどうすればよいのでしょうか?それを考えてみることにしましょう。

目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできようになることである
(エッセンシャル版p.140)

目標を使って経営する

先にもお話をしましたが、一つの組織が、社会に存在する多様なニーズに対応するということは不可能です。広い社会に存在する医療や看護に対する多様なニーズのうち、自院はどんなニーズに対応するのか、どんなニーズを生み出していくのかという病院独自の使命を持って、その使命に従って職員一同が同じ方向を向いて組織を経営することが必要です。
そして、同じ目標に向かって、それぞれが持つ異なる知識を統合して行動することが、価値を生み出し成果をあげる道のりです。

ドラッガーは、マネージャーは自らの率いる部門のあげるべき成果を明確にする必要性を説き、目標にははじめから成果を組み込む必要性を強調しています。みなさんの組織では、病院(病棟)の使命を共有し、あげるべき成果を明確にし、スタッフはその実現に向かって個人の目標を設定して行動されているでしょうか?

エグゼクティブとは

一般に、エグゼクティブとは自ら意思決定して実行する人のことを指しますが、ドラッガーは、エグゼクティブとは組織の成果に責任を持つ人だと規定しました。ドラッガーが書物の中でよく取り上げる話として次のようなものがあります。
ある日3人の石工が何をしているのかと尋ねたところ3人の答えは次のようなものでした。「これで食べているのだ」「国中で一番上手な石切の仕事をしている」「教会を建てている」と。そしてドラッガーは「協会を建てている」という石工だけが組織の成果に従って自分の責任を果たすエグゼクティブだと説きました。
マネージャーはエグゼクティブでなければなりません。だからこのように組織の成果を明確に持ち、メンバーに示す必要があります。そしてその成果こそが組織の目標です。 メンバーはその目標に対してどのように貢献するかを考え、自己の目標を設定して具体的行動を立案して実行していく、すなわち個人も自分自身でPDCAサイクルを回しながら、自分を自分でマネジメントしていくことが必要であり、それを支援するのがマネージャーの役割です。

目標管理

現在目標管理を導入されている病院は多いと思いますが、メンバーが自律的に実行されているでしょうか?
メンバーが上からやらされている状態になっていたり、書くこと自体が目的になっていたりはしていませんか?
そもそも目標管理とは、エグゼクティブが自己を管理するため自ら行うものであり、上から押し付けられて実行しても意味がありません。

したがって、目標管理を導入する前には、まずは全てのメンバーをエグゼクティブであるという意識を持たせる教育が必要であり、導入後に行う支援はプロセスを管理するということ。目標管理のプロセスでは、個人がPDCAサイクルをうまく回せるように支援することがマネージャーの役割です。

組織の成果に責任を持つのがマネージャーなのに、個人の結果を評価するだけでは組織の成果に責任は持てません。
いい結果が出るように、個人のプロセスを支援して、問題があれば軌道修正に導くことが重要です。
ドラッガーは、行動したあとに期待していた結果と事実を比較して次の行動を考えることを、フィードバック分析と称して常に強調していますが、目標管理もこのフィードバック分析を行いながら、目標達成にむけて行動します。

個人の強みを伸ばす

個人が組織への貢献を考えるとき、重視するのは個人の得意とする分野を活用するとうことです。
時にマネージャーはメンバーの成長を願って、あえて個人の不得意分野に課題を与え、目標に掲げるよう促す傾向があります。
しかし、ドラッガーはことごとく個人の強みを伸ばすことを強調しています。
マネージャーがプロセス管理でフィードバック分析を行うときには、メンバーのよく出来たと思う仕事を聞き、そして次に一生懸命取り組んだ仕事を聞きます。この2つで出てくるのがそのメンバーの強みです。
そこを組織は特に活用して、個人のその能力の更なる強化を目指します。また、うまくいかない仕事についても聞きますが、それはそのメンバーの弱点です。弱点は強みの発揮を阻害する要因となるため、不得意分野は組織も期待をしない、個人もそこにこだわらないと決めます。
そして「集中」「改善」「勉強」すべきことを考えます。集中とは、強みの部分で貢献する、改善とは、弱点の部分は捨てる、勉強とは、貢献する部分の知識や技術を強化するということです。すべて平均的な人材を育てるのではなく、各自が自分の得意分野を伸ばしながら、それぞれの力を融合ししながら目標達成を目指すことが、個人の成長にも、組織の成果にもつながる近道だというのがドラッガーの考え方です。

情報の共有と動機づけ

ドラッガーは、この目標管理こそが個人の仕事への動機づけになるといいます。
しかし人は承認の欲求を持っており、目標に向かって個人で黙々と努力をするだけでは満たされない気持ちになるのも事実です。
そのためマネージャーは、メンバーの頑張っているプロセスが他のメンバーにも見えるようにする仕組みづくりを検討します。

たとえばペーパーやWEBを使ってメンバーの仕事を公開し、その人がどんな強みを持っているのかを院内(病棟内)に開示してはいかがでしょうか。
それによって個人の承認の欲求を満たすことができるうえ、それぞれの強み(=知的財産)が共有できれば、他のメンバーが困ったときに知識を得たり、助けを求めたりする行動を起こしやすくなり、組織の生産性も向上します。
誰が何をしているかわからないという組織では、個人のやる気も阻害され、情報を得るための行動も時間がかかります。
成果をあげるには、組織をオープンにすることも大切なポイントだと考えます。

また、賞賛のシステムを考えることも有意義です。組織の理念や方針、目標に従って賞賛する重要ポイントを絞ることで、賞賛に向かって行動すれば組織への貢献につながる行動になり、組織や個人が目標を設定しやすくなるというメリットにもなりますね。

マネジメント力Checkリスト

 

 これまでマネジメントについてさまざまなお話をしてきましたが、ご理解いただけたでしょうか?
日頃マネジメントをされていることがドラッガー理論とつながっていることもあったのではないですか?
マネジメントをするうえで、今回の内容全てを実行しようと必死になることはありません。マネージャーのみなさんご自身も、自分の強みと不得意分野があるはずです。
ご自身の強みはどこなのかを考えて、今回の話を参考に「ご自分らしいマネジメント」をお考えください。

それを考える道しるべとして、全体を振り返る意味で最後にチェックリストをご提供し、このコーナーを締めくくりたいと思います。

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引用・参考文献
ピーター・ドラッガー「マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則」2001, ,ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか」2008, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「非営利組織の経営」2007, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「ドラッカー 365の金言」2005, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「経営者に5つの質問」2009,ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「経営者の条件」2006,ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「マネジメント[上]―課題、責任、実践」2008, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「マネジメント[下]―課題、責任、実践」2008, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー「創生の時―往復書簡」1995, ダイアモンド社
ピーター・ドラッガー明「日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命」1999, ダイアモンド社


寄稿
ナーシングビジネス
第6巻第1号(通巻69号)
2012
メディカ出版

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