4.目標管理

知識労働者は、自分自身で独自に使命を持って仕事をするといわれますが、看護師さんはそれが強いように思います。長期に渡って専門教育を受ける中で、看護師という職業の使命を考える機会が多いことから、組織に属してからも、それぞれが自分の看護観で判断して自分の仕事の方向性を見つけられるのではないでしょうか。しかしそれでは組織の使命にしたがった成果を出すことは困難です。ではどうすればよいのでしょうか?それを考えてみることにしましょう。

目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできようになることである
(エッセンシャル版p.140)

目標を使って経営する

先にもお話をしましたが、一つの組織が、社会に存在する多様なニーズに対応するということは不可能です。広い社会に存在する医療や看護に対する多様なニーズのうち、自院はどんなニーズに対応するのか、どんなニーズを生み出していくのかという病院独自の使命を持って、その使命に従って職員一同が同じ方向を向いて組織を経営することが必要です。そして、同じ目標に向かって、それぞれが持つ異なる知識を統合して行動することが、価値を生み出し成果をあげる道のりです。
ドラッガーは、マネージャーは自らの率いる部門のあげるべき成果を明確にする必要性を説き、目標にははじめから成果を組み込む必要性を強調しています。みなさんの組織では、病院(病棟)の使命を共有し、あげるべき成果を明確にし、スタッフはその実現に向かって個人の目標を設定して行動されているでしょうか?

エグゼクティブとは

一般に、エグゼクティブとは自ら意思決定して実行する人のことを指しますが、ドラッガーは、エグゼクティブとは組織の成果に責任を持つ人だと規定しました。ドラッガーが書物の中でよく取り上げる話として次のようなものがあります。
ある日3人の石工が何をしているのかと尋ねたところ3人の答えは次のようなものでした。「これで食べているのだ」「国中で一番上手な石切の仕事をしている」「教会を建てている」と。そしてドラッガーは「協会を建てている」という石工だけが組織の成果に従って自分の責任を果たすエグゼクティブだと説きました。
マネージャーはエグゼクティブでなければなりません。だからこのように組織の成果を明確に持ち、メンバーに示す必要があります。そしてその成果こそが組織の目標です。 メンバーはその目標に対してどのように貢献するかを考え、自己の目標を設定して具体的行動を立案して実行していく、すなわち個人も自分自身でPDCAサイクルを回しながら、自分を自分でマネジメントしていくことが必要であり、それを支援するのがマネージャーの役割です。

目標管理

現在目標管理を導入されている病院は多いと思いますが、メンバーが自律的に実行されているでしょうか?メンバーが上からやらされている状態になっていたり、書くこと自体が目的になっていたりはしていませんか?
そもそも目標管理とは、エグゼクティブが自己を管理するため自ら行うものであり、上から押し付けられて実行しても意味がありません。したがって、目標管理を導入する前には、まずは全てのメンバーをエグゼクティブであるという意識を持たせる教育が必要であり、導入後に行う支援はプロセスを管理するということ。目標管理のプロセスでは、個人がPDCAサイクルをうまく回せるように支援することがマネージャーの役割です。組織の成果に責任を持つのがマネージャーなのに、個人の結果を評価するだけでは組織の成果に責任は持てません。いい結果が出るように、個人のプロセスを支援して、問題があれば軌道修正に導くことが重要です。
ドラッガーは、行動したあとに期待していた結果と事実を比較して次の行動を考えることを、フィードバック分析と称して常に強調していますが、目標管理もこのフィードバック分析を行いながら、目標達成にむけて行動します。

個人の強みを伸ばす

個人が組織への貢献を考えるとき、重視するのは個人の得意とする分野を活用するとうことです。時にマネージャーはメンバーの成長を願って、あえて個人の不得意分野に課題を与え、目標に掲げるよう促す傾向があります。しかし、ドラッガーはことごとく個人の強みを伸ばすことを強調しています。
マネージャーがプロセス管理でフィードバック分析を行うときには、メンバーのよく出来たと思う仕事を聞き、そして次に一生懸命取り組んだ仕事を聞きます。この2つで出てくるのがそのメンバーの強みです。そこを組織は特に活用して、個人のその能力の更なる強化を目指します。また、うまくいかない仕事についても聞きますが、それはそのメンバーの弱点です。弱点は強みの発揮を阻害する要因となるため、不得意分野は組織も期待をしない、個人もそこにこだわらないと決めます。そして「集中」「改善」「勉強」すべきことを考えます。集中とは、強みの部分で貢献する、改善とは、弱点の部分は捨てる、勉強とは、貢献する部分の知識や技術を強化するということです。すべて平均的な人材を育てるのではなく、各自が自分の得意分野を伸ばしながら、それぞれの力を融合ししながら目標達成を目指すことが、個人の成長にも、組織の成果にもつながる近道だというのがドラッガーの考え方です。

情報の共有と動機づけ

ドラッガーは、この目標管理こそが個人の仕事への動機づけになるといいます。しかし人は承認の欲求を持っており、目標に向かって個人で黙々と努力をするだけでは満たされない気持ちになるのも事実です。そのためマネージャーは、メンバーの頑張っているプロセスが他のメンバーにも見えるようにする仕組みづくりを検討します。たとえばペーパーやWEBを使ってメンバーの仕事を公開し、その人がどんな強みを持っているのかを院内(病棟内)に開示してはいかがでしょうか。それによって個人の承認の欲求を満たすことができるうえ、それぞれの強み(=知的財産)が共有できれば、他のメンバーが困ったときに知識を得たり、助けを求めたりする行動を起こしやすくなり、組織の生産性も向上します。誰が何をしているかわからないという組織では、個人のやる気も阻害され、情報を得るための行動も時間がかかります。成果をあげるには、組織をオープンにすることも大切なポイントだと考えます。
また、賞賛のシステムを考えることも有意義です。組織の理念や方針、目標に従って賞賛する重要ポイントを絞ることで、賞賛に向かって行動すれば組織への貢献につながる行動になり、組織や個人が目標を設定しやすくなるというメリットにもなりますね。

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