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“出会い”への感性を研ぎ澄まそう

リーダーは積極的に出会いを求めていこう

看護管理者やリーダーとしてメンバーを引っ張っていくとき、自分自身が「たくさんの人と出会い、広い世界を知っている」ことは非常にたいせつです。ですから看護管理者は人との関わりを意識的にたくさん持ち、人脈や知識を広げていくことが求められていると言えるでしょう。

たとえばスタッフのキャリア支援をするにしてもあなた自身が狭い世界しか知らないと、キャリアにはどのような選択肢があるのか、どんな勉強や経験を重ねるのが良いのか、だれに指導を受けていけばよいのか、適切なアドバイスを与えにくいからです。

ですから看護関係の学会はもちろん、看護以外の学会やさまざまな勉強会に参加して記者や編集者、一般企業の人などと出会いながら世界を広げていくことをお勧めします。

「人と物事との出会い」が人生を決めていく

これまでの人生を振り返ってみてください。「あのときにあの人に出会っていなければ、今の私はないかもしれない」と思うことはありませんか。人や物事との出会いは不思議なもので、なぜそのときに出会ったにかはわからないけど、その出会いによって自分の意識や世界観が大きく変わったことがあるはずです。出会いには“これぞ”というタイミングがあります。それに気づくには「感性」が必要です。「この人と話してみたい」「ちょっとやってみようか」という予感や理由はわからないけど惹かれる感覚ってありませんか?

「惹かれる感覚=感性」です。ぜひその「感性」を研ぎ澄ませてその出会いから自身の成長につなげてほしいと思います。

中には「私にそんな劇的な出会いがあったかしら?」と思う人もいるかもしれません。でも今、そうして管理者というポジションにいるのも出会いによるものではありませんか? 「たまたまです」「ほかに人がいなかったから」「前任者が突然辞めたから」……いろんな理由はあるかもしれませんが、ただ一つ、間違いなく言えることは、あなたが今そのポジションにいるのは「あなたがそこにいる“タイミング”と出会った」ということです。

出会いは自分でコントロールして出会えるものでもありません。

私は出会いを通じて「今まで見たことがない景色を見せてもらったり、これまで見ていた景色を違うように見せてもらっている」と感じます。その人が私自身の世界を広げてくれているように思えるのです。人と物事との出会い、そしてそのタイミングがその人の人生を決めていく」といっても過言ではありません。

そのときはわからないこともあります。でも後から振り返って気づくと「あのときにあの人と出会ったからだ」と気づくことがあるはずです。出会いによって人は自己を発見し、自分の世界が広がり変化につながることがあります。

人生の転機となった、私の2つの出会い

私にも人生の大きな転機となった2つの出会いがあります。

1つめはNTT東日本関東病院に勤務して10年目、労働組合の役員に選ばれたことです。まだ30代でした。助産師としてのキャリアを積んでいたものの、その後キャリアをどのようにしていこうかと悩んでいた時期でした。

労働組合の役員となることで病院内外のいろんな人と関わる機会となりました。それまで病院の中の世界しか知らなかった私にとっては「他職種は自分が思っている以上に看護のことを知らない」「他職種に何らかの対応を求めようとするなら、主張するだけではなく工夫をして理解しやすく説明することが必要」といったことを知るいい機会となりました。

また、それまでは一看護師として目の前の看護を行うことに集中していましたが、この経験から「病院経営」という視点でものをみるきっかけになり以降の私の看護管理者人生に大きな影響を与えました。

2つめは産婦人科の師長をしていたときの出会いです。ある日、一人の看護師からこんな看護観を聞きました。

「看護とは患者が亡くなるまで、患者自身ができることをできるだけ自分でできるようにサポートし、できないことは(私たちが)支えるということだと思います」。

それを聞いて、私はそれまで自分が「看護」というものを真剣に考えてきたのだろうかとハッとさせられました。そして自分が明確な「看護観」を持っていないことに気づいたのです。それ以来、私は「看護とは何か」を繰り返し自問自答するようになり、看護の本も読み漁りました。

そうして、「看護とは、患者の生きる力を引き出すこと」ではないかという考えを持つに至りました。もちろん答えは一つではありませんが、この「看護とは何か」について語った看護師との出会いがなければ、私の意識に大きな変革は起こらなかったと思います。

みなさんも毎日の「大事にすべき出会い」に感性を研ぎ澄まし、何かをつかみとる、あるいは良い変化をもたらす機会ととらえて大切にしてみてください。

 

坂本すが:元日本看護協会会長。東京医療保健大学副学長・看護学科長・教授。和歌山県立高等学校保健助産学部卒業。元NTT東日本関東病院看護部長。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。

※本連載は「看護師長のためのベーシックスキルBook ナーシングビジネス2023年春季増刊」(メディカ出版)、「わたしがもう一度看護師長をするなら」(医学書院)の内容から抜粋して再編集したものです。