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江戸~東京 古き良き伝統を継承しつつ、時代に見合ったケア(看護・リハビリテーション)を創造し、紡いでいく

越後晃子さん
(株式会社エンスリー 江戸東京訪問看護リハビリステーション 看護管理者)
 

脳神経外科病棟で勤務をして専門性ある退院支援の必要性を実感

看護師・保健師免許取得後、都内大学病院の脳神経外科・整形外科の混合病棟にて急性期医療に従事しました。高度医療の現場で3年間専門性を磨く一方、退院後安心して生活が送れるよう支援の必要性を強く実感しました。もちろん教科書的には退院支援のキーワードなどは知っていたものの、実際にどのタイミングでだれにどう繋いでいけばよいのかなど具体的な知識が足りないことに気がつきました。そこできちんと在宅医療を学ぼうと、社会人も受け入れている大学院修士課程の在宅看護専門看護師コースに進学しました。

指導教授から専門看護師コースは、必須科目数も多いため、大学病院を離れて指導教授の研究センターで研究補助や看護学生の実習指導や演習サポートなどのティーチングアシスタントすることを勧めていただいたことや週1回は在宅医療の先進地域である新宿にある訪問看護ステーションでアルバイトさせていただき、在宅看護の教育・研究・臨床に触れる機会に恵まれました。

大学院修了後は、アルバイトでお世話になっていた訪問看護ステーションにそのまま就職し、専門看護師(日本看護協会認定資格)を目指すべく「専門看護師に期待される6つの役割①実践②相談③調整④倫理調整⑤教育⑥研究」を意識しながら、様々な経験を積ませていただきました。

その後は、結婚・出産もあり8時半から17時15分までの勤務でライフワークバランスも保ちやすい区役所の介護保険課に非常勤の保健師として勤務しました。産休、育休を含めて10年程勤務しました。介護保険制度の申請から運用まで、行政の立場から学んだだけでなく、所属していた部署は地域包括支援センターや福祉事務所としての側面もありましたから窓口相談や認知症や障害者・生活困窮者の方の対応、高齢者虐待の対応など多分野の部署とも連携しながら難渋するケースへの対応や研修のも経験しました。

2022年に専門看護師の資格を取得し、2023年4月に理学療法士の夫とともに株式会社エンスリーを立ち上げました。夫が代表取締役、私が看護管理者として古き良き伝統を継承しつつ、時代に見合ったケアを創造し、紡いでいくという想いを込めて江戸東京訪問看護リハビリテーションをスタートさせたのです。

 

管理者の醍醐味は「個々の信頼に基づく看護実践」を「組織として再現可能」にすること

法人である「株式会社エンスリー」は、「三つの縁」に由来します。①職員、②利用者・家族、③地域との3つの縁をたいせつにしたいという思いから名付けました。

いちばんたいせつなのは従業員とのご縁で、その後に利用者・家族、地域と続きます。従業員を最初にあげたのは、専門職のウェルビーイングが最大の経営資源だと考えているからです。職場環境が悪いと仕事を続けることもできません。

私自身も経験をしましたが女性はとくに結婚・出産・育児などのライフイベントにより生活や仕事が左右されます。仕事と生活を両立できるようにすることだけでなく、たとえばまとまった休みをとって海外に旅行に行きたいなんて希望が出たらそれも実現したい。そんな職場がつくれたらいいねと夫とも話して理念を社名にも掲げました。

立ち上げ時には緩和ケアの認定看護師や訪問看護に興味のある看護師を募ってスタートしました。

今年の4月で4年目を迎えますが、ありがたいことに多くのご依頼・ご縁に恵まれ、看護師・常勤5名、非常勤1名、理学療法士・常勤4名、非常勤4名、作業療法士1名、事務1名で4月には新たに緩和ケア認定看護師や理学療法士も入職予定で運営しています。

「看護はアートだ」という言葉がありますよね。私もそう考えています。在宅医療は病院医療とは違って“治療中心”ではなく“生活中心”です。利用者さんとともに「未来予想図」を描くことが大切。そのためには表面的なかかわりだけではなく、信頼関係を紡いでいくことでその人らしい選択肢が広がり、より質の高い支援が生まれてきます。在宅医療者と利用者、ご家族との共同作業だともいえるでしょう。

管理者としてのやりがいは、その信頼に基づく実践を「組織として再現可能にしていく」ことです。自律した専門職の集団として訪問看護、リハビリテーションを機能させていく、その過程こそが経営の醍醐味かなと思っています。

看護師も人によってそのキャリア、バックグラウンドは違います。それぞれの強み、弱みを把握して対応力を磨いていき、個々の努力だけでなく、ステーションとしてその強みを引き出していく。「個」での対応だけでなく「面」として利用者と向き合っていくことがたいせつだと思っています。そのためには職員同士が目線をしっかり合わせていくことです。

緊急時に何かを判断するときに、日ごろから実践を通じて意見交換していなければその判断は共有できません。だから私たちは他のステーションよりも比較的、多めに同行訪問を予定すること、区役所時代に培った人脈を職員の方と顔つなぎ、地域に根ざした顔の見える連携を体現すること、ICT活用なども積極的に取り入れること、ステーションにとどまらず中央区介護保険サービス事業者連絡協議会の副会長として地域の他事業者を巻き込みながら研修を企画するなど地域の専門職のレベルアップへの取り組みも積極的に行っています。

あとは「雑談力」というのでしょうか(笑)。雑談をしながら気になることを「我が事」として気軽に相談、情報共有できる環境をつくることを心掛けています。

朝夕に簡単なミーティングをして「こういう方向性でいきましょうか」とすり合わせをしています。また常勤のメンバーで週に一度定期カンファレンス、全職員で月1度ハイブリッドのカンファレンスを行っています。

 

気をつけているのは、ゆるやかな管理。“大人の学び“を支えていくことを意識している

私たちの医療は病院のような統制的なモデルではなく、利用者の生活を尊厳する医療モデルです。そのためには専門職の判断を信頼して利用者の選択を受け止める姿勢が必要だと思っています。細かなルールをつくってそれを守るのではなく、専門職を信頼して“緩やかな管理”をしていく「覚悟」がマネジメント側には求められます。

リスクをゼロにするということは現実には不可能です。現実を引き受ける覚悟、医療的な合理性と生活の尊厳の間に生じる葛藤を引き受ける覚悟、経営の責任を負う覚悟などです。

それを前提としてスタッフには一人ひとりが専門職として自律した看護師、理学療法士であることを重視して仕事を任せています。

たとえばCOPDの利用者さんがおられるとしたら、医療モデルでみるとどうしてもタバコを禁止する指導となります。しかし現実にはこれまでそれをやめられずに現状に至っているわけですから、その利用者が自分らしさを損なわずに受け入れられる落としどころを探っていくのです。

必要性だけ対応するのではなく、その利用者自身の生活や、大切にしている価値観を考慮したうえで対応をするという点では各スタッフも覚悟をもって取り組んでいると言えます。

そういったスタッフにいきいきと働いてもらうには「管理しすぎない」「でもしっかり見ているよ」「いつも支え続けるよ」というメッセージを経営者側が出し続けることが大事と思っています。

病院だと「時間どおりに」「プロトコールどおりに」できることがよしとされる文化がありがちです。しかし人には強み、弱みがあります。ここではその「弱み」の部分も受け止めながら自律に向けてのサポートをします。それも過干渉にならずにやること。それが“大人の学び”を支えることになると思っています。

 

~コラム~
月に1回、ビル1階の焼鳥屋さんのお弁当を提供しています。

東京スカイツリーでBBQ企画して職員だけでなくご家族にも参加してもらったり、釣り好きの職員が釣ってきたマグロやタコを使ってすし飯を作ってお寿司やたこ焼きを作って歓迎会を開催するなど定期的にコミュニケーションをはかっています。ステーション内の冷蔵庫には夏にはアイスクリームをたっぷり冷やしていたり、お菓子やスープ類は日ごろから十分に用意して自由に食べたり飲んだりできるようにしています。

今年度から看護大学の実習生の受け入れ(韓国人留学生含む)や、訪問看護に興味を持たれている医師や関連する人から要望があれば訪問看護の現場への同行も受け付けています。

私自身が学びや仕事を通じて保健師、看護師としてまた他職種のみなさん等多くの方々から得た学び継承し、地域や後に続く専門職の皆さんに還元する、「恩送り」をしたいと思っています。