「3333の法則」で最初を乗り切る
これから訪問看護の管理者やマネジメント職にお役に立つ話をお届けしていきます(便宜上、総称として「看護管理者」と呼ばせていただきます)。
もし初めて看護管理者やマネジャーといった立場に立った方は、これからどんなことが待ち受けているか不安なこともあるかと思います。
私がかつて足の指を骨折したときに友人が「333の法則」を教えてくれました。それは「3日はしんどい、3週間経てば骨が固定してよくなってくる、3か月すればほぼ完治」というものです。
この「333の法則」は行動科学でもよく使われますが、3日続ければ継続力がつき、3週間続ければ習慣となり、3か月続ければ結果が出るというものです。「3」を使った法則はほかにもいろんな場面で使われますが、いずれも習慣形成することの大切さを述べていることが多いです。
私はこの「333の法則」にもう一つ「3」を加えて「3333の法則」というものを考えて私が勤める大学での卒業式では、はなむけの言葉として送っています。
「就職したらまず3日がんばれ。3日がんばったら3週間がんばれ。3週間がんばったら3か月がんばれ。3か月がんばったら3年がんばれ。そうすれば必ず何かが見えてくる」と。なにごとも継続するなかで見えてくるものです。「まずは3日」をがんばってみてください。
看護管理者の役割は「仕事を楽(ラク)にする」こと
みなさんの中にはこれまで病院や施設で看護部や多くのスタッフを支えてきた「ベテラン」の方もいれば、初めて管理職になる方、これから管理職を目指す方などさまざまおられるでしょう。いずれにせよ「看護管理者」は看護師を束ねる「マネジャー」です。「マネジメント」にはピーター・F・ドラッカーによれば次の5つの共通する仕事があります。
① 目標を設定する
② 組織する
③ 動機づけとコミュニケーションをはかる
④ 評価測定する
⑤ 人材を開発する
これらはもちろん看護管理者にも当てはまります。じっさいに現在の仕事を思い浮かべていただいてもこのような内容にだいたい分けられると思います。もちろんそれぞれの職場によって違いはあります。自身もスタッフの看護業務を手伝ったり、その他部門のスタッフの業務の推進も行ったり、他の部署との交渉を行ったり、大量の書類整理に追われたりしているかもしれません。
しかし、看護管理者にもっとも求められているのは、目の前の業務をスタッフとともにこなしていくことではありません。現場を俯瞰して見ながら問題点を見つけ、優先順位をつけながら一つひとつ解決することです。看護業務よりマネジメントを率先して担うことこそ看護管理者がすべきことです。それをすることでスタッフの仕事を現状より「楽」になるからです。「仕事を楽(ラク)にすること」が看護管理者のいちばんの仕事です。
私は病院勤務時代、看護師長になりたてのころ「病棟を今より良くするためにはどうすればよいか」について病棟を回って問題を見つけようとしました。そしてサービス残業となっていた超過勤務時間帯の給与を付与する、全員参加が必須だった看護研究を希望者のみ参加とするなどの改革に取り組みました。
スタッフが負担に感じている部分を解消することが自分の仕事だと考え、「スタッフを楽にすること」に注力したのです。その結果、スタッフは自分の仕事を認めてもらっていると感じたのか、残業があってもいやな顔をせずにがんばってくれました。看護研究も意欲的な看護師のみが取り組むことにはなりましたが、長期的には良い研究ができ研究成果を上げることができました。スタッフに無駄な労力を使わせないことこそが長期的に見れば人材の定着や組織の成長につながるのではないでしょうか。
「スタッフを楽にすること」が「スタッフのやりがいを生む」ことにつながる
私には「仕事は楽しくないと意味がない」という仕事のポリシーがあります。
看護という仕事は病院や施設の利用者の生活を整え回復に向けてサポートをします。その人たちの人生にかかわり、手助けをし、人生の終幕を支える役目ももっています。その経験を重ねると「人の一生とは何なのか。なぜ人は生きるのか」という問いかけが浮かぶ場面にも遭遇することでしょう。
看護職はそのなかで「自分には何ができるか」を考え、それを実現しようと努力を重ねます。看護管理者はスタッフの仕事を楽にすることによって、スタッフがより看護の仕事の奥深さを知り、仕事に意義があり、楽しいものだと気がつくことにつなげていくことができます。「仕事を楽にする」には「喜びをもたらす」という意味でもあります。
坂本すが:元日本看護協会会長。東京医療保健大学副学長・看護学科長・教授。和歌山県立高等学校保健助産学部卒業。元NTT東日本関東病院看護部長。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。
※本連載は「看護師長のためのベーシックスキルBook ナーシングビジネス2023年春季増刊」(メディカ出版)、「わたしがもう一度看護師長をするなら」(医学書院)の内容から抜粋して再編集したものです。


