久保田牧子さん(ほのか訪問看護ステーション 看護管理者・経営者)
特別支援学校で看護師をして感じた「この子たちの帰宅後のケアは?」
病院で小児にかかわる仕事をした後、特別支援学校での看護師を5年しました。するとそれまで病院では「退院おめでとう」と送り出していましたが、学校では病院を出た子どもたちを受け入れる側になりました。そうなるとぜんぜん「おめでとう」ではないわけです。本人も毎日の生活をがんばっているしご家族も悩みを抱えながら朝も夜もケアを続けているという姿をみると「病院から帰った後のケアが大事」ということに気がついたのです。私が教員とは違って看護師ということもあり、お母さんたちもいろんな生活面の悩みなどを聞かせてくれたのです
そこで「訪問看護ならご家庭にうかがっていっしょに困っていることなどの力になれる」と思うに至りました。そこでまずは“雇われ管理者”として現場に飛び込みました。
そして5、6年経ったころ「もっと地域に根ざした看護の幅を広げていくことはできないだろうか」と思い始めました。自分の思い描く看護や在宅医療を実現するには自分でやるのがいいと思い2022年に会社をつくり「ほのか訪問看護ステーション」を立ち上げました。
開設にあたっては、ふつうはもっと計画的にやるのでしょうけど(笑)私の場合は勢いでバタバタっとやりました。ものごとには「タイミング」ってありますよね。ちょうど「自分でやりたい」と思ったときは自分のエネルギーが満ちていましたし、さらにコロナ禍の時期と重なって開設の手続きがオンラインで簡素化されたり、開業資金の助成があったりしたのです。そして自分を振り返るタイミングにぴったり合ったのです。まさに「今しかない」って思えて3か月で立ち上げることができました。
選んでもらえるステーションになるには実践と実績が大事
私は障害福祉のサービスも広げていきたかったので、独立してから訪問看護だけではなくいろいろな人に会って“自分たちが携わっている訪問看護がどのように受け止められているのか”を感じる機会が増えました。これがやりがいやおもしろさにつながっていると思います。自分で経営していると「勤務の範囲内かどうか」などと考える必要がなく、やりたいことに自分の判断ですぐに着手することができます。
いろんな訪問看護ステーションがあるなかでどうやって特徴を出していくのか、選んでもらえるかを考えて体制づくりをしていかねばなりません。信頼を得るには何よりも実践と実績が必要です。コツコツと日々の訪問をこなして利用者さんと向き合いながら得られるものを大切にしたいと考えています。
経営はつねにバランスなんですね。量をこなすのか質を上げていくのか。私は、今は地域活動に根ざして地域のニーズを探してそれに応えていく時期だと思っています。それに向けてスピード感をもって動くことができるというのが自分で経営している醍醐味です。
私が考えていることはミーティングや訪問同行をする際にスタッフには直接伝えるようにしています。同行はスタッフの戸惑いや悩みに寄り添うチャンスでもあるので大事にしています。
目の前の1件の訪問を大切に。そこから地域が変わっていく
利用者を増やすために、地元のイベントに参加することによって自分たちの活動や特徴を紹介し、利用者の生活を支援するサービスであると理解を得ることを積み重ねています。その結果その活動や運営方針に共感する人が増え利用者は150名、スタッフも常勤・非常勤を含めると15名になりました。
小さなステーションだからこそスタッフ個々の強みを活かし、フットワークよく活動できることが地域の声に寄り添うことに繋がっています。
開設から4年目、2つの拠点に規模拡大した現在、力を注いでいるのはステーション内の情報共有。訪問先から得た情報、体験、気づきを共有することで、一人での訪問では気がつかない視点、物事を深く正しく見抜く力、判断力が身につくと考えています。
情報が「単なる情報」に終わらず知恵や洞察につながれば1件の訪問もさらに意味あることになります。だからこそ「目の前の1件の訪問が大事」というのがうちのスタンス。そういった毎日の積み重ねが地域を変え、社会貢献になっていくと信じています。


