佐々木早苗さん(ななーる訪問看護ステーション 大阪エリア管理者)
やり始めてわかった、訪問看護のおもしろさ
新卒で大学病院に就職して救命救急センター、NICUで経験を積みました。2000年の介護保険法施行から「急性期からでも患者さんが在宅に戻るらしい」という話は聞いていましたがそのころは将来自分がそれにかかわるとは思っていませんでした。
2010年に家族の介護のために私は一度仕事をやめ、介護から手が離れたときに再就職を考えました。大学病院や総合病院で働くことも選択肢にはありましたが、自分のワークライフバランスも考えて、いったん派遣で夜勤のないサ高住での看護の仕事に就きました。
するとそれまで病院での看護と180度違う看護の仕事を知ったのです。病院の目的はあくまでも治療です。看護師はその診療の補助業務を受け持ちます。しかし、病院を離れた看護師の仕事には「看護の本質」が問われます。もちろん病院勤務時代にも看護の本質を考えなかったわけではありません。でもそれほどピンとは来ていませんでした。自分の先輩をロールモデルとしてその姿を追いかけていたって感じです。
2017年からななーる訪問看護ステーションで本格的に訪問看護の世界に入りました。最初から強い関心があったわけではないのです。しかし、訪問看護の仕事はまさに看護の本質を考え続ける仕事です。診療の補助業務ではなく「看護によって利用者さんの病気が治っていく」という姿を見て、あらためて看護の力を実感しました。「生きるを活きるに導く看護」というななーる訪問看護ステーションの理念はまさに看護の本質だと思います。
スタッフの顔つきがパッと変わる瞬間を見ることができるのがやりがい
今は大阪エリアにある11のステーションを3人の管理者で担当しています。私がおもに担当しているのは「看護の質を上げる」部分。もともと現場が大好きなので「教育」っていうのはあまり得意分野じゃないんです(笑)。でも良い看護を提供したいとはいつも思っています。だからスタッフにも良い看護をしてほしい。おもしろいのは良い看護ができるとスタッフの顔つきがガラリと変わるんですよ。
病院での勤務しか経験したことのない看護師が訪問看護をすると最初はわからないことだらけです。顔もどんよりしています。病院ならいつも同じベッドに患者さんがいて情報が手に入りますが、訪問看護だと会えるのは週に1回。しかも行くたびに状況が違うこともあります。最初は自分が何をしたらよいかが整理できないし利用者さんのことも理解もできないのです。その期間は疲れた顔をしてステーションに帰ってきます。
ところが訪問を重ねると利用者さんの声や家族からの相談を受けて情報が増えていきます。私にその報告をしてくれていると最中で「あっ!」とか言って表情がパッと変わるんです。頭の中でバラバラだった情報がつながる瞬間なんですね。管理者をやっているとそんな場面がよく見られるのがやりがいかもしれません。
だれかが待っている「夏は涼しく、冬は暖かく明るい」事務所に
訪問看護の仕事って基本は一人での行動です。看護師は訪問先への行き帰りでいろんなことを考えています。だから帰ってきたら気軽に話ができる環境を心がけています。
まずはスタッフが帰ってきたときにはステーションにいることです。訪問看護をした後って一種の興奮状態で帰って来ることも少なくありません。訪問先での出来事を誰かに話すことによって前述したように頭の中で看護が組み立てられるときがあるのです。そのときは話し相手になることによってそれをサポートします。訪問看護は自分が納得しなければ動けません。だから本人が看護を組み立てる必要があります。「鉄は熱いうちに打て」です。いっぽうで疲れて早く家に帰りたいときもあります。そんなときは「おつかれさま」と見送るだけにします。
事務所は、「夏は涼しく、冬は暖かく、そして明るい」状態にしています。だれだって疲れて帰ってきて暗い事務所に入るのはいやですからね(笑)。
5人ではじめた事務所も今は総勢40名ほどになります。大きくなれば目が行き届かないところも出てきます。自分が健康であることと、いつも原点に戻って「生きるを活きるに導く看護」を全員が実践できるように気を配っていきたいと思っています。


